たまたま見つけた素敵な可愛いマグカップ、調べたり、人に訊いてみたら、ポーリッシュポタリーという輸入食器だそう。でも、「ポーリッシュポタリー」って、どこの、どんな食器なのでしょう。今日は、ポーリッシュポタリーの基本的な知識からちょっと詳しい情報までをさらりと説明してみたいと思います。

まず、ポーリッシュポタリーという呼び方ですが、これは英語です。”Polish pottery” つまり、ポーランドの陶器、という意味です。
ポーリッシュポタリーは陶器?磁器?という記事で陶器と磁器の違いについて解説しましたが、ポーリッシュポタリーは厳密にいうと磁器に分類されます。粘土に石粉分が多く、高温で焼成されるためです。なので、磁器を表す”stoneware” が正しいのですが、古い時代から器は”pottery” と呼び習わされてきたこともあり、”Polish pottery” と総称されています。

さて、日本ではご旅行やお仕事でポーランドを訪ねられた方がお土産で買って帰られるなど、昔から一部ではとても人気がありました。
数年前から、女優の小倉優子さんや梨花さんがポーリッシュポタリーをお好きということが話題になり、ご本人たちがSNSでポタリーを紹介したこともあって急に人気がでてきました。
映画やドラマなどのシーンで、ポーリッシュポタリーのマグカップなどがさりげなく使われていることもよくあります。個性的な形や色味、独特な可愛らしさが、空間演出に好まれるようです。

【産地はボレスワヴィエツという町】


ポーランドの国内で作られた陶磁器なら何でもポーリッシュポタリーなのかというと、そうではありません。現在、ポーリッシュポタリーと呼ばれて世界で人気を博しているのは、ポーランドの南西部、シレジア地方のボレスワヴィエツという町で作られているものに限定されます。ポーランドではボレスワヴィエツ以外にもいろいろな種類の陶器が作られていますので、本来はポーランド陶器というよりはボレスワヴィエツ陶器と呼ぶ方が正しいことになります。
このボレスワヴィエツという町はポーランドとチェコ、ドイツの国境付近にあって、ある時期はドイツ領だったりしたこともあります。付近を流れるボブル川とクフィサ川の川床からとれる粘土がとても良質なため、古くは14世紀頃から陶器作りが盛んに行われてきたという歴史があります。

日本で作られる食器も製造地によって「有田焼」「信楽焼」など色々種類があるように、ポーリッシュポタリーもボレスワヴィエツ陶器と正しく呼ぶべきなのかもしれません。実際、そのように呼ばれる場合もありますが、私共、Ameliaポーランド食器では、あまり細かな言葉の違いにこだわらず、ボレスワヴィエツ陶器をポーランド食器、ポーリッシュポタリーと呼ばせていただいております。

  *ポーランドには東部のファイアンス
   ポーランドや東欧の陶器についてご興味がおありの方は、誠文堂新光者から出ている
   「東欧のかわいい陶器」という本がお勧めです。東欧の焼き物文化を幅広く見ることで、
   ボレスワヴィエツ陶器の成り立ちや魅力も一層深く味わうことができるので、ぜひ一度
   ご覧になってみてください。

【ボレスワヴィエツの場所】

ボレスワヴィエツの町がポーランド、チェコ、ドイツの3つの国境に近い位置にあることから、ドイツをはじめ様々な国に「ポーランド産の陶器」と紹介されたことが、世界中でポーリッシュポタリーと呼ばれることにつながったのかもしれません。特にドイツの方が旅行やお仕事でポーランドにいらした際に、お土産に買っていかれるポーリッシュポタリーが大変喜ばれ、世界から注目されるようになっていったようです。

▲ 赤い丸印がボレスワヴィエツです。ワルシャワよりも、ドイツのドレスデン、チェコのプラハから行く方が近いようですね。ご旅行の際に参考になさって下さい。

【ポーリッシュポタリーのメーカー】

ボレスワヴィエツには陶器工場や窯元とよばれ、ポーリッシュポタリーを製造し世界に輸出しているメーカーが沢山あるのですが、その中でも大手と呼ばれるザクワディ社、マヌファクトラ社、アルティスティチナ社などの商品が日本に多く輸入されていて人気もあります。新しいメーカーも沢山あって、
中でも2001年、ミレニアムの年に創立したミレナ社は現代的なデザインと新しい色使いで大変人気があります。
しかしながら実際には第二次世界大戦前から家族で窯元を営んでいる、家族経営の伝統ある窯もあることでしょう。ザクワディ社は、そのホームページの中で「当社はポーランドの陶器メーカーの中でも、最も古い歴史を持つ窯のひとつです。」と言っています。その中のひとつです、というところがとても謙虚で、ポーリッシュポタリーの歴史を大切に思っていることがうかがわれます。

ポーリッシュポタリーを随分おおざっぱに説明いたしましたが、ポーリッシュポタリーが作られ始めたといわれる14世紀は日本では鎌倉時代から室町時代です。
この間のポーリッシュポタリーの歴史としては、もともとは粘土の地色が白ではなかったことや、白い粘土で焼成することに成功した陶器職人のヨハン・ゴットリープ・アルトマン親方の尽力、現代のポーリッシュポタリーの代表柄、ピーコックアイ模様にまつわる貴族文化との関わりなど、その歴史を語れば尽きることがありません。このあたりは、ブログの回を追うごとにテーマ別に解説していくこととさせていただきます。
学校のカリキュラムではありませんので、ブログのタイトルをご覧になって、ご興味が湧いたものからご覧いただければさいわいです。

▲ ポーリッシュポタリーの中でも特徴的なのがりんごポット。可愛い容器でもあり、オーブンで使える調理器具でもあります。

Ameliaポーランド食器 りんごポット一覧

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